カテゴリー: -神様の物語:はじまりのいえ-genesis- Gopher house

第1話:はじまりのいえのはじまり

木から生えたキノコの家 そこに宿るものが 外を眺めていた
その森は もう何日も雨が降り続き 地面は水で溢れて 川のように流れていた

雨粒がキノコの傘に当たるたびに 胞子が空にまかれるが すぐに雨に濡れて落ちてしまう
宿主はそれを見るたび どこにも行くことができないことを 確認していた

それからも雨は降り続き まるで地の表をすべて洗い流すように勢いを増すばかりだった

ふと 宿主は考えた このキノコの生えている木は 大丈夫なんだろうか
この雨で根が腐り 枯れてしまうのではないか
すると突然 宿主の体は キノコの奥 木の中に引きずり込まれた

宿主が気がつくと そこは 円状の壁を囲むようにしてできた巨大な図書館のようだった
天井が見えず 下も底が見えないほどに深かった
また 真ん中には 円板状の床があり そこから壁に向かってハシゴがかかっていた
中央では 何人かがテーブルに座り 何か仕事をしていた
他の幾人かは そのテーブルに本を運んできたり また運び出したり また何かを連絡したりしていた

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第2話:はじまりのいえのこどもたち

あなたはわたしが示すところへ行かなければならない
そこにいって わたしの指示することをし 地に水の源を据えるようにせよ

その方は 宿主に一つの石を与えた
もし 行った先であなたの名は何かと言われたら これをもって見せなさい
それがその場所での あなたの名となる
あなたは 行った先ですべて日毎の糧を獲なければならない それは必ず与えられる
必要以上に求めてもならず また必要よりも少なく求めてもいけない

行った先で わたしは語ろう たとえ姿は見えなくとも わたしはそばにいる

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第3話:はじまりのいえのかえりみち

少し戻って
北の国 国境付近では激しい戦闘が繰り返されていた
血で血を洗うような行為の繰り返し かつて同じ血が流れていたもの同士が争っていた

そこで かつて兄と呼ばれていたものが戦っていた
その人は自軍では英雄といわれており この戦いにおいても 大きな戦果を挙げていた
しかし彼は これを続けることに疑問を持っていた
それは 自分の国の王と敵国の王が血を分けた兄弟であり 自分がその子であることを知
っていたからだ

彼は 二人の王に可愛がられて育った
北の王には体づくりや武器の扱い方を 南の王にはあらゆる知識に通ずる基礎を授けられ

彼は 周りからも言われるほどに 幸せに育っていた
そして 彼自身にも兄がいた
血は親の代で分けられたものであったが 兄弟のように育てられ 同じように学んだ
兄は彼よりも全てにおいてまさった者で 人々からも尊敬されており 彼も敬っていた

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第4話:はじまりのいえのおかしづくり

その方は 羊と少女を引き連れて 木の中にある図書館へ戻ってきた
少女は驚きと喜びの混じった声をあげ 走り回った
近くにいた 本を運んでいたものにぶつかりそうになり 双方よろけるが
少女は羊たちの方を振り返り にんまりと笑った

その方は二人を上の階へ連れて行った
その道中 羊はふと螺旋階段の窓の外を見た
すると 先ほどまでいた場所 その町が燃え上がっていた
戦いに巻き込まれたのか と羊は思ったが その方が答えた
あれはわたしの火だ 心配することはない
わたしが燃やし 古いものを焼き尽くしている
あとは英雄と あのこどもたちに任せればいい
あのこどもたち と羊は疑問に思ったが 以前少女が町から導き出したこどもたちのことだと思い至った
その方は言われた
英雄はやがて王となろう
彼はわたしの与えた思いに従って 国を建てあげ 導くだろう
わたしが送ったことばの通り 二人の王は一つとなったのだ

その方は 羊たちをあの食卓へ導いた
少女はその方に尋ねた
もう食事の時間ですか?
その方は答えられた
いまから食事を作るんだよ
すると 傍の扉から食材がどんどんと運び込まれてきた
少女はおもわず おお と声をあげた
羊もよくわからず めえ と鳴いた
いまから甘いお菓子を作ろう もちろんみんなでね
そのあいだ 一つの話をしてあげよう
その方は 近くにあったイーゼルを引き寄せ そこに一つの本を立てかけた

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第5話:はじまりのいえのかげのもり

少女と羊は 木の中を走り回っていた
中で働いているものたちは その二人に振り回されるように動いていた

二人は階から階へ駆け回り 本棚の隙間をぬうように走り回った
すると そこで作業していたものに少女がぶつかりそうになるが きれいに避けて去っていった
羊はそれを避けきれず 本棚にぶつかってしまった
それに気づいた少女は 急いで駆け戻る
羊がぶつかった本棚は 衝撃で揺れていた
そこは整理中の本棚だったため 上に連れて本が多く入れ込まれていて もともと不安定であった
本棚はゆっくりと倒れてきて 羊の上に倒れようとした
少女は羊をかばうために本棚の間に入るが 羊はそれをさせまいと 自分が少女に覆いかぶさるようにした
羊はいった
どうか わが城なる方が私をおおってくださるように
そして二人は目を閉じた

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第6話-1:はじまりのいえと いろのついたはなのみち 藍色

しばらく歩くと 岩の裂け目があらわれた
男の子はそれを指して言った
ここから洞窟に入るんだー
羊たちは そこから入ろうとしたが 灯りがないことに気付いた
木を切ってきたとしても 火をつけることができないので どうしたものかと考えた
男の子はそんなこともお構いなしに 岩の裂け目に入っていった
羊たちはそれ気づき 慌てて追いかけた
すると 羊が背負っていた花は光を発してあたりを照らしていた
男の子は羊たちの方を向いて
どうしたの? 早く行こうよー
と二人に言った

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第6話-2:はじまりのいえと いろのついたはなのみち 青色

羊たちは 男の子を先頭にして どんどん進んでいった
すると 開けたところに出た
下は水浸しで 天井も水で覆われた 不思議なところだった
羊たちは そこを見渡しながら進んでいくと 花の光が少し強く光り 全体が照らされた
そこで初めて 奥に誰かがいることに一行は気付いた

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第6話-3:はじまりのいえと いろのついたはなのみち 緑色

男の子は鼻歌交じりに進んでいくが 二人は後ろ髪を引かれるような感じでいた
しかし 戻ったところでどうすることもできず 事実その場にいて何も言うことができなかった
ああ もしその方がここにいたのなら なんとおことばをかけられるのか
羊は下を向いて そんなことを思っていた

おー 光が差し込んでる 外に出るのかな?
男の子が声を上げた
二人は前を向いた
岩の切れ目から 光が漏れ出ていた
そこから風が流れ 温かい香りが男の子や二人を包んだ
いいかおり ぼく 先に行ってみてくるね
男の子は抑えきれなくなって 走り出していった
二人もそれを見て小走りであとを追いかけて行った

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第6話-4:はじまりのいえと いろのついたはなのみち 黄色

羊は違和感を覚えた
この胸に起こる感情はなんなのだろうか
内を暴れまわって 体を疲れさせるこの思いはなんなのだろうか
しかし 口に出そうにも めえ という鳴き声になってしまう
溢れそうになることばは 寸でのところで 引き返し それが海の波のように繰り返された

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第6話-5:はじまりのいえと いろのついたはなのみち 橙色

麦畑を抜けると 川が流れていた
男の子はそこに走って近寄ってみたが 水に色はなかった
羊たちも近寄ってみたが それに色はなかった
この先には もうないのかな
男の子はそうつぶやいた
羊は川の流れがどこに続いているのかをたどった
それはどうやら山から流れているようだった
山の上には 日の光のように 強く光を放つものがあり あたりを照らしていた
ここは本当に不思議なところだ
羊はそう思った
そうしていると 川の流れのうちに 一筋の色が下って来るのを見た
それは これまでとは違う色のようだったが 羊のところにくるころには水の中にかき消えてしまった

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