カテゴリー: 神様の物語:はじまりのいえの紙片

第23話 その1

そこには 大きな船が停泊していた
大きさは 小さな町ほどもあり 船の上には 多くの人が乗っていた
その周りには 普通の大きさの船が集い 船体をつなぎとめて流されぬようにし ものを運んだり 人が行き交ったりしていた
その方は そこを指差して言われた
あの場所で休もう 船の旅は もう少し続くから そこで食事をしよう
子どもたちは あまりにも大きな船に驚き 歓声を上げた

昔 人々を運ぶ大きな箱があった
それは 人々とともに 流され 吹かれるままに進んでいた
あてもなく さまよい やがて行き着くだろう土地へと期待を寄せ 人々は過ごしていた
もし これが人によるのであれば 運ぶ力に耐えられるであろうか
人々の重さや 運ぶ風や水が吹き付けると 箱の継ぎ目はきしみ 詰めた土は泥となって流れ出ないであろうか
もし 人を作った方が これを作らねば それは人を運ぶのにたえることのできないもの むなしいものとなろう

第23話 その2

その方は 船を大きな船に寄せ 橋に結びつけた
子どもたちはそれぞれ荷物を持ち その方に引き上げられて登り 橋を渡って大きな船の方へと移動していった
王女は言った
その方たちは どこへ向かっているのですか?
その方は答えた
女性の生まれた地だ
あなたの守っている国をおびやかすものが そこにはある
人を支えるに足りぬ葦は それに頼るものを突き刺す
王女は女性の方を見たが 女性は首を傾けていた
その方は言った
あなたがたは目的の地についた時 それを悟るだろう
だから 今は目の前のことに 今日を作られた方のみこころを行うために 示されたことをしよう

その方たちは 船の受付所で 停泊の手続きをした
そのあいだ 子どもたちは 互いに語り合った

第23話 その3

女性は王女に言った
王女さまもこの旅に来てくださるなんて しあわせです
王女は答えた
一時的によ 最後までついていけるかわからないわ
国のこともあるし
少女は受付をしているその方のほうを見て言った
王女は 記録していた時間から切り取られてこっちに来たんだよね
じゃあ 昔は昔でそのままとかなんじゃないかな
王女もその方のほうを見て答えた
全く解決していないまま 私だけこっちでいるのは みんなに申し訳ないわ
でも それが私のすべきことなのであれば 私はついていくわ
羊は二人の顔を見て めえ と鳴いた

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第23話 その4

その方は手続きを済ませたあと 子どもたちのところへ来て言った
食事をしにいこう
羊たちは顔を上げ その方を見た
食事の準備はしてあるのですか?
女性は尋ねた
その方は女性を見て言った
わたしはとっておきのものを用意してある
だから わたしについてきなさい
子どもたちは立ち上がり その方のあとをついていった

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第23話 その5

人の作った箱には 雨が降り注いだ
それは 箱の上からも その周りにも降り注ぎ 水かさを増していき 箱は地から離れてしまった
人々はその中で 来たる時に望みを置いて 自分たちの乗っている箱がどうなるかを 気にも留めなかった
自分たちの役割は 完了した あとは 望みを刈り取るだけだ と
人は 自分たちの業に信頼し 人自身に信頼した
そして 自分たちを作られた方を軽んじ 心の赴くままに夢を見 それに至ると考えていた

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第23話 その6

おい 誰か来てくれ!
叫ぶ声が聞こえた
人々は声のする方向を見て 子どもたちも顔を向けた
一人の男性が仲間に何かを慌ただしく伝えていた
子どもたちは気になり 人々の間をぬって そこに近づいた
叫んだ男性は 仲間に小さな声で話していたので ほかの人は聞き取れなかったが
その話を聞いた仲間も顔色を変えて 叫んだ男性についていって 階段を降りて行った
王女はそれを見て言った
なにが起きているのか 行ってみましょう
少女たちは頷いて 男性たちの後を追った

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第23話 その7

良いものは良いものへ 悪いものは悪いものへと引き寄せられ 同じものが集うように
水の中に潜むもの 空に浮かぶ黒いものは ともに同じものへと引き寄せられていた
火のないところに煙は立たず 死体のあるところにははげたかが集まる
それらは 汚れたものを喰らう為に それを洗い流す為に 向かっていた

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第23話 その8

子どもたちは部屋を出ると 顔を見合わせた
これからどうしようか
少女はみんなの顔を見て言った
そして 四人は手をつなぎ 目をつぶって祈った
どうか あなたのみこころのままに あなたの仰せの道を歩めますように
あなたの光をもって 私たちを御導きください
すると 羊は本を取り出し 筆をとって何かを書き始めた

第23話 その10

そこへ 一人の男の人が通りかかった
羊は足音にびくりとして 少女の背後に隠れた
少女たちは男の人の方を見た
男の人は少女たちを見て声をかけた
君たちは この船の乗客かい?
少女は答えた
はい 泊まる予定です
男の人は少女たちを値踏みするように見つめ 言った
そうか 泊まるのであれば あまりうろつかないほうがいい
ここにはいろんな人がいるからね
少女は答えた
大丈夫です 自分のことは守れますから
男の人は笑って去っていった

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