第29話 その6

昔々あるところに片目のない女性がいました
その女性は生まれた時から片目がありませんでした
女性はもう一つの方の目で世界を見ていました
なので他の人の見る世界の半分しか見ることができませんでした
しかし女性はそれを悲しいとは思いませんでした
それは彼女を作った方が
彼女の見る世界は素晴らしいものに作り変えていたからです

女性が道を歩いていると
服のない人がいました
女性はその人に声をかけて言いました
どうしてあなたは服を着ていないのですか
その人は答えました
私は貧しく服も売ってしまい食物に変えましたがこうして何もない状態なのです
女性は言いました
さあ私の着物を着なさい
私の持っている食料も少し分けてあげましょう
これを食べて今日生きなさい
そう言って女性は上着を取ってその人に与え
持ち出したパンの半分を取ってその人にあげました

また女性が歩いていると
道に迷っている人がいました
女性はその人に声をかけました
どうして道に迷っているのですか
その人は答えました
私は地図を読むことができず
一緒にいた人ともはぐれてしまいました
女性は言いました
その地図を私に見せてください
私があなたを目的地まで案内しましょう
そう言って女性はその人を連れてその人の目的の家まで案内してあげました

また女性が歩いていると
心を失くした人が道に立ち尽くしていました
女性はその人に声をかけました
どうしてこんなところに立ち尽くしているのですか
そういって その人を抱きしめました
女性は言いました
あなたは生きています
あなたは私と同じく息をしています
そして 私に無いものをあなたは持っています
だから 私はその目に私の持っているものをあげましょう
そういって その人の目に口付けをしました

そのときから 女性は目の光を失ってしまいましたが 少しも悲しいとは思いませんでした
彼女のうちには光が灯されていたからです
彼女は持っているものをすべて人に施しましたが 彼女は一番必要なものに満ちていました

あるところに 両目の無い女性がいました
彼女が微笑むと 人にも花が咲き 彼女が話すと 人も同じようにことばを紡ぎます
彼女は目が見えませんが いまは手を引いて一緒に歩いてくれる人がいます
そして 彼女が見るものはすべてに愛が注がれ溢れていたので 彼女は何一つ不自由しませんでした