第29話 その5

私は言った
あなたが種をくださったのではないですか
あなたがこれを成長させ 私をその実にあずからせてくださるのですか
すると 種をくださる父は 答える
わたしはあなたにこの地を管理しなさい
また あなた自身増え広がりなさい と言ったのだ
あなたが成長させるのではない
わたしが先に彼らを祝福し あなたの前で増え広がるように命じたのだ
あなたはその中にあって 彼らを支配し 彼らを管理しなさい

だから 人は自分のいるところを治めねばならない
そこにあるものは 父が繁栄をくださるのだから
その祝福を地に満たし また 流さねばならない

ある画家がいた
その人は毎日筆を執り 出かけては そこから見える景色を描いていた
その人が描くものは 何にも偏り見ず 見たままを描いていた
しかし それを見て人は言った
これは どこを見て描いているのですか
画家は答えた
ここから見える景色です
絵を見た人は首をひねり どこを見て描いているのかがわかりませんでした
画家は言った
私は絵を描いているのではなく 詩を書いているのです
目で見ていることではなく 心で見て感じていることを書いているのです
すなわち この世界に溢れる光を受けて それをこの紙に写しているだけなのです

そこから遠く離れたところへ 画家は行って絵を描いていた
すると 別の人がその絵を見た
そして 言った
あなたはこの場所を知っているのですか
画家は答えた
これは 目の前に広がっているではありませんか
あなたが見ているこの景色が それです
その人は言った
あなたは この景色がこの絵のように見えるのですか
どうしたら 私にもそう見えるのでしょうか
画家は答えた
あなたには この景色がこうは見えないのですか
でも あなたはこの絵のことを知っています
だから あなたは心にある余計な色を抜いてしまいなさい
そうすれば 混じりけの無い 美しい世界を見ることができます
その人は言った
どうすれば あなたのように きよい心になることができますか
画家は答えた
父のことばを聞きなさい
それは 日々を生きるパンであって あなたに必要なものです
私がここに来て絵を描いているのも 父に言われて行っていることなのです
そして 画家は一つの本を取り出した

あなたの知っている希望を ことごとく書き出しなさい
それは 画家の持っている本のようになるだろう
それを 自分の抱いている希望を尋ねるものに いつでも聞かせることのできるように 持っていなさい