第29話 その2

羊は書を開いて 筆を執った

一人の小さな勇士がいた
彼は自分が勇士だとは気づいていなかったが その手に握られた剣を誇らしげに掲げ 道を歩いていた
彼は道行く獣を打ち負かせ 自分に従わせ 困っている人を助け出し 悪者を懲らしていった
彼は言った
私の歩く道は 私の主人の道である
私は主人の来る前に すべてを平らにするべく来たのである
彼はまだ幼く 善悪を知らなかったが それは彼にとっても 彼の主人に取っても 瑣末なことであった
彼は自分の行いが純粋であるかをいつも確かめていたからである
そして 彼の握っている剣は 愛によって形作られ その言い送った方の思うところを成し遂げる他は なにもできないのであった

彼は山を切り倒し 谷を埋めて 荒地に川を流し 荒野を切り開いていった
彼は その剣によって 人々の心を砕いていき その中にある不要な石をことごとく取り除いていった
彼は言った
すべて私の前に来るものよ あなたがたに言う
身をきよめなさい
それは すべての不義がゆるされるためである
彼は 自分が語っていることを 完全には理解していなかった
それは 彼の口が彼の主人のことばを語っていたので 彼の心から出ていることではなかったからである
しかし 彼は語っている時に そのことばを聞いて 自分自身もそれを受け入れた

小さな勇士は 道の真ん中を歩きながら 叫んで言った
私に集まるものよ 待ち望め
あなたがたの望みは もうすぐ来る いや もう来ているのだ
あなたがたは 目を洗いなさい
心を新たにしなさい あなたがたがその報いを受けるためである
人が贈り物を受け取った時 開ける前に中身を推測して 自分勝手に議論して 開けないまま保管しておくだろうか
もし自分の望むものでなかったら などと考えて あとに取っておこうと自分に言い聞かせるだろうか
それは 人のすることではない それは 人の子のすることではないのだ
子は自分に与えられたものは なんでも受け取る
それは うちに宿っている良心のためだ
子どもは自分に与えられたものを自分のものとして受け取り
自分に属しているものに与えられたものを自分のものとして喜ぶ
あなたがた貧しいものよ 手をきよめよ
そして 自分の望むものに手を伸ばしなさい
それは 蛇でもなく石でもない
それは 我らの父からの贈り物なのだから

羊は書き終えると 本を閉じ そして開いた
すると それはなくなっていた
羊は辺りを見回し ページをめくって確認したが 先ほどまで書かれた文字は もうなかった
羊は首をひねったが 少女が羊の顔を見ると 驚きつつ笑い声をあげた
それは 羊が書いたものが羊の顔に写っていたからである
その方は 羊たちの方を見ていった
あなたが受け取りなさい
それは あなたのうちにいる勇士であって あなたのために叫んでいることなのだから
羊は それを聞いて めえ と鳴いた