第29話 その1

“詩篇56
指揮者のために。「遠くの人の、もの言わぬ鳩」の調べに合わせて。ダビデのミクタム。ペリシテ人が、ガテでダビデを捕えたときに”

ある人の家に強盗が入り その人は一冊の本を持ち出して逃げた
強盗は 家財をかすめ その人にも手を伸ばそうと追ってきた
その人は 岩の割れ目に隠れ 強盗から逃れようとした
しかし 彼らは夜の住人であって その人よりも暗き所での目は慣れていた
強盗は 一歩一歩その人に近づき その人のいのちをも捕らえて奪おうとした
その人は 本を開いて祈った
父よ あなたへの誓いは  私の上にあります
私はあなたに信頼する故 他のものは私に何をなしえましょうか
父よ 私をつまずきから この死の穴から救い出してください
あなたが語られた希望の故に あなたが与えてくださった約束の故に
私が あなたのいのちの光のうちに あなたの御前を歩むために

強盗がその穴の入り口に手をかけようとした時 その穴は光り輝いた
強盗の目は光に刺し通され その目の光は奪われた
彼は 地に倒れ 穴を探すことも困難になった
その穴から その人が出てきた時 彼は光輝く勇士が 強盗の上に立ち 彼を縛り上げているのを見た
その人は言った
我が主よ

“詩篇56:9
それで、私が呼ばわる日に、私の敵は退きます。神が私の味方であることを私は知っています。”

荒い息は 地に吹き荒れ それは 人々を襲った
これは 人の願い その心の底にある欲望ではないか
荒い息は 悪しきものを呼び起こし 巷は不正を行うもので満ちた
豊かなので高ぶり 自らを見失って獣となるものは 自らの行いが罠となって捕らえられる
しかし 義人は彼らの中にあって その行いの故に嘆き 哀歌を歌っていた

あなたはどうして こうも汚れてしまったのか
あなたは 私たちが幼い時 すべてのことに対して純粋であったではないか
あなたは自分の手が人の血で真っ赤に染まっていることを知らないのか
あなたが手に触れるもの全てが その血の叫び声をあげている
ああ 美しかったあなたは 自らの衣を血で汚し あなたの口は拭うことのできない悪意に満ちている
誰があなたから その盃を取り除くことができるだろうか
それは 高く上げられ あなた自身に降りかかるのだ
彼らは言う あの盃が我らを酔わせ 不正の道を開かせたのだ と
あなたはどうしてそれを手離さないのか それはあなたにとっても棘であり 身を傷つけるものであるのに

見よ 彼らはやってくる
光を携えてくる それは磨き抜かれた剣による
それは さやから解き放たれると 留まることを知らず あなたを根から断ってしまうだろう
あなたは 戻ることのできるうちに あなたの父に会うことのできるうちに 帰ってきなさい
私は喜んであなたを迎えよう
父はこんなにもあなたを装ってくださったではないか
どうして これらを台無しにしてよかろうか

抜き身の剣

それは どんな大勇士の持つものよりも鋭く これがひらめくとき 狙ったものを逃すことなく斬り刻む
それが放たれた時 罪の根は絶たれ その上に座しているものは地に倒れる
これは死の使いであって 王が来られる前に災いをことごとく刈り取るものである
そのとき刈り取られる実は災いである
それによって絞られた杯は災いである
そして これを飲むものは 災いである