第28話 その9

旅人は 遣わされた国へ行き  事の次第を伝えた
それは あなたのご子息が 私どもの国の王女と婚約をしたということだった
戦争を準備していた王や大臣は 至急会議を開き  王子を引っ張り出した
すると 王子は堂々と答えた
あなたがたは自分たちの思いに歩んでこの国を ひいては民全体を滅ぼそうとしています
これは  戦争に負ける などと安易なことを言っているのではありません
この戦争の勝ち負けに関係なく あなたがたの行い自体が破滅を呼ぶものなのです
あなたがたは かつて何を望んでいたのかを思い出しなさい
我らには 自分たちにふさわしい指導者が必要だ
我らには 正しい道に歩むための 天からの幻 希望となる指標が必要だ と
しかし あなたがたは 以前属していた国に反逆し 自分勝手に歩み始めてからというもの あなたがたはその目的を忘れて 私利私欲に走り 自分たちの望んだゆえに建てられた権威 あなたがたの恵みの基として 我らの父がお与えになった監督者をないがしろにし そのことばを退けて 自分たちの夢見ごとのために毎日を空しく過ごしているではありませんか
あなたがたが歩む道は 先祖の歩んだものと異なり あなたがたが自分たちも他の人々も知らない 獣の道ではないですか
獣は そのほふられる日のために 自らを肥え太らせ そして 自分のいのちを自ら捨てるのです
あなたがたは 私たちの父によって選ばれ その似姿によって形作られたものたちではないですか
なぜ あなたがたの助けにもならぬような 獣の道を今更歩もうとするのですか

だから 私はあなたがたに言いましょう
私は あなたがたの選択にかかわらず 私の愛する人とともに生きます
それを この民全体と 相手の民全体との前で宣べつたえ 彼らが どちらに従うかを見ましょう
しかし 民がどちらを選ぶにせよ 私たちは私たちを愛してくださる父の道を歩み 私の愛する人とともに その道を進みます

王や大臣たちは 王子がこれまでこんなことを話したことがなかったので驚き そして 自分たちが何をしていたのかを 知った
自分たちが かつて何を夢見て離反したか その志を曲げて 自分たちの欲のために道を逸れてしまっていたことも
彼らの目に明らかとなった
王子は言った
あなたがたは いま 私に言いなさい
あなたがたは 何を選ぶのかを
私は必要なことを あなたがたの前に述べました
だから 私の父は 私を顧みてくださるでしょう
あなたがたはどうしますか
王や大臣たちは顔を合わせ 心を打たれたので 王子の前に出てきて言った
私たちも あなたの後についていきます

王子は 王女と結ばれ 二つの国は一つとなった
それは 愛の帯によって
盲目は目を開かれて見える目となり 閉じて冷えてしまった心は 本来受けるべき愛を受けて温まり 蕾が花開くように 開いていった

彼らは 進むべき道を示されたので 留まることなくその道を歩み続けた

医者たちは 少女と女性が去っていくので 一緒について言った
しかし 少女は町を見て言った
あなたがたがここからいなくなってしまったら この町は誰が見るのですか
病はこの町から取り除かれましたが 今後それらが再び起こらぬように守るのは あなたがたの仕事ではありませんか
医者たちは それらを聞いて立ち尽くしたが その足元に羊がすり寄った
医者たちが羊を見ると 羊から咲く花から 蜜が滴っていた
それは 羊が光り輝いた時に 町中に満ちたもので 病を退けたものであった
医者たちはそのことを思い出し 羊の花の蜜の滴を 瓶で受け止めた
蜜は瓶に満ちた
医者たちは瓶の中の蜜を見て言った
これを調べたら 病から人々を守るための何かがつかめるかもしれない
そうして医者たちはそこを去って 各々自分たちに与えられたことを成し遂げにいった
少女と女性はそれを見て満足そうに笑い 羊も めえ と鳴いた

よくやった わたしの子たちよ
その方は車を導いて 少女たちのところへときた
少女は言った
この町で起きたあの病の原因は どうすればいいのですか
その方は 少女を見つめて答えた
わたしたちは それを解決しに 進んでいるのだ
だから もうここに留まることはできない
そういって 子どもたちを車に乗せた
その方は 子どもたちをすべて車に乗せ終えると 車を出して 町を出発した
行く先には 荒い雲が渦巻いていたが その方の車は おくすることなく その方向へ突き進んで行った

小さな魚は このことを見ていた
小さな魚の食物であったものは 光り輝く羊から流れる蜜により砕かれた
小さな魚は その蜜に口をつけた
そして その味は 前の町で年を経た女性が流した涙に含まれる 暖かな部分に似ていた
しかし これは 小さな魚にとっては身を焦がすようなもので 小さな魚はすぐにコップの中に沈んでしまった

これは 汚れたものが決して口にすることができないもの
しかし 小さな魚は 身を焦がしさえすれども 口にすることはできた
果たして 彼はどちらの側のものなのか
しかし それを考えるものはいなかった