第28話 その4

私たちの王は 私たちのうちにあらわれて自らをしもべのようにし 私たちに仕える心を教えられた
彼の弟子となり 彼に聞き従ったものは 柔和な心を得て 彼の子と呼ばれるようになり
その国は堅固なものとなった
柔らかいもので堅いものを制し あらゆるものに寄り添い 彼の虜としてとらえていき 一切のものを私たちの王の足の元へとひれ伏させた
それは 縛られてでも 強制されてでもなく ただ御心のままに行われた
あなたは言った
わたしを信じて受け入れるものは わたしの子となり わたしとともに生きるようになる と

私たちは その希望を追い求め 私たちの先祖は それを探す故に迷い すでにあらわされたものを見捨てて 自分たちの解釈(はかり)に従って見出そうとしました
しかし あなたはご自身を変えることなくもう一度あらわされ 誰にも批判させるようにはなさいませんでした
我が王よ その御衣のうちに 我らをおおってください
あなたの懐へと招き入れてください
それこそが 私たちの住まいであって 私たちの望む天幕です

二つの国は 争い 大きな戦争を起こそうとしていた
そこへ 彼らの王子と王女であるものたちは 互いに遣いを送ることにした
それは 彼らの目を開けるためであって すでに私たちが求める所は与えられ それが誰の目にも明らかになるように 求めていた方ご自身がお立ちになったことを告げるためであった

小さな魚は 二人の医者を見ていた
彼らは 何を言っているのだろうか と思っていた
それは 羊の症状が明らかであるのに 処方をせずにいるように見えたからであった
小さな魚は それを知恵で判断していたのではなく 内にあるものを見ていた
心から出るものが人を病ませる
対立する心 支配する瘴気は 毒となって周囲を侵し 蝕んでいく
それは小さな魚の食物であったので 魚にはそれを見る目があり それを嗅ぎ分ける鼻があった

小さな魚は 羊の苦しんでいる香りを嗅いで ふと思い出した
これは 自分の知っているものだ
これは 自分の生まれたところのにおいだ と
しかし 小さな魚自身は その香りの正体が何から嗅いだものかを知らなかった
ただ 生まれたところで感じたものだとは知っていた

羊は目を薄っすらと開けた
少女はそれを見て歓声を上げ 羊を抱きしめた
やっと目を覚ました
よかった よかった
少女は羊に頬ずりし 羊は めえ と鳴いた
羊は 少女からするりと抜けると 少し苦し気な表情を残しつつ 本を取り出して筆を走らせた

それは この先起こることであって 不穏なものに光を当てるものであった
その頭にはこう書いてあった
やがて押し迫る すべてを枯らす毒の風へ対抗するために

それは 遠い国 女性の故郷であり その方たちが向かっているところであった
それは 腐った息をまき散らし それを風に乗せて 種を蒔くように 自分の支配する場所を広げていた
その息にかかったものは いのちを衰えさせ やがて地に伏して動かなくなる
もしくは 狂い その息を吐いたものの奴隷となる

その方は 風が吹くのを見て その方向を見つめた
このまま子どもたちが動き出さねば わたしも手を下さねばならない
そうなる前に 彼らを導かねばならない
そう言って その方は目を閉じ ことばを紡いで それぞれの人へ向けて語りだされた