第26話 その9

それは突然に来ました
夜を駆ける盗人のように 茂みから現れるマムシのように
そのものは町に迫り 多くの人を自らの側へと引き込むために
手を伸ばし 幼子を取り去ろうとしていました
しかし それは羊飼いの招いた火に焼かれ 人々の心とともに焼かれていきました
水の底に住むものは呪われていると書いてある通りに 忍び寄るものは小さな魚と同族でありました
しかし そのものは 女性の故郷からの風に侵され その分を超えてしまったので 陸へと上がり 人に牙を向けるものとなってしまいました
その数は多く 町の人々だけでは対抗することはできませんでしたが
天から降る その火が 彼らを焼き尽くしました

小さな魚は 火に焼かれたものに食べ飽き そして 自分の同族だったものが焼かれていくのを見ました
小さな魚は それを救いであると考えました
間違えを犯す前に芽は取り除かれたのですから 犯して退けられるよりは その前に根を断ち切られる方が良い と思ったのです

火は 羊たちも包み 人のうちから火が絶えることのないように留めていました
羊たちは 火を招いた羊飼いの少年を見つめて 口々に めえ と鳴き始めました
彼らとともに育ったものが この地を治めるものとして立ったのを見たからです
羊飼いは再び口を開きました
あなたがたのうち 心に示されたものは 私の元に来なさい
すべて 周囲の人からの評判が良く 自分をよく治めるもの また そのように心に示されたものは 私の元に来なさい
私はその人に手を置いて祈り 私の手の届かぬところのないように 一部をその人に監督させる
それは この地ではどこでも 飢えたり乾いたりして その身を悩ませ 苦しみに遭うもののいないようにするためである
また その中で私の目にかなうものには 私の子たちを任せよう
そのものはこの子たちの間に住み 日々その恵みに与りなさい
こうして あなたがたは自らの道に安心して入り 離れることのないようにしなさい
人々はそのことばに同意し 心に示された人たちは自らの意思で羊飼いの前に進み出て 祝福を受けました

人々が各々の居場所へと戻り 羊飼いがこの地を治め始めたのを見て その方は少女たちに声をかけて 呼び寄せました
よくやった わが子たちよ
あなたがたはわたしの願う通りに歩み 先に語ったことばの通りの行った
見なさい この地の人々を この地の産物を
はじめに来た時は しなびて うつろで 今にも折れかける葦のようだったが
いまはいのちを吹き込まれ 己がどのように作られ どのような目的 願いを込められて形作られたのかを知った
それは 時期が来て 穂の中に実をつけ 風に吹かれて揺れているように 生き生きとして いのちの香りを放っている
わが子たちよ 次の場所へと 進もう
この地は すでに父の手に委ねられたのだから
子どもたちは頷き その方の車に乗って その方は車を走らせました