第26話 その8

町では 人々が互いにぶつかり始めていました
自分のすべきことだと思っていた自分勝手な計画に足を進め 周りも自分をも顧みず急いでいたために
他の人にぶつかり 傷つけてしまうようになりました
彼らは自分の主張のみを語り 足元に赤子を踏んでいても気にすることなく 叫び続けました
私を通らせよ 私の道を進ませよ
それは皆のものが語り 口をそろえて言いましたが 一致ではなく不和を生み出し 破滅に先立つものでした

そこへ その方の車がやってきて 後ろから羊の群れが続きました
その方は車を止めると その上から人々を見ました
羊の群れは 止まった車を避けるように側を駆け抜け 人々のいるところへと流れ込んでいました
人々は驚きましたが 逃げる間もなく羊たちは人々を覆い もはや羊と人との区別ができなくなるほどでした

すると その方は叫びました
そこまで
羊たちはその声を聞くと ぴたりと止まり その方を見ました
羊たちの隙間から人々は顔を出し やっとの思いで立ち上がりました
そして いま何が起きているのかを知るためにあたりを見回していました
その方は言いました
羊のような町の人々よ
あなたがたは自分の道をわきまえていると思っているのですか
ならばどうして人とぶつかることがありましょうか
すべて正しいことを行うならば 敵対者でなければぶつかることはありません
あなたがたは誰に対して叫び 怒りを燃やしているのですか
あなたがたは自分の進むべき道をわきまえなさい
人々は その方を見つめ その語ることに耳を傾けました
その方は言いました
あなたがたは 上に立っていたものに従って 自分たちの進むべき道を見ず ただ自分たちの進みたい方向へと歩いていました
しかし それは人の目には正しくとも あなたがたを生んだ方の目には曲がっているのです
あなたがたは 自分だけが満足するような険しい道を歩むのではなく
自分も周りのものも安らかに過ごすことのできる平らな道を歩きなさい
すると 一人の人が口を開いて言いました
では その道にはどうやったら入ることができるのですか
その方は答えます
あなたがたに先立って進むものがいます
それが この子です
その方は羊飼いの少年を引き出して彼を紹介しました
その方は羊飼いの少年の耳元でささやきました
あなたが他のものよりも年が若いことを気にしてはいけない
あなたはわたしの父が授けた知恵がある
それはあなたが自分自身で得たものではなく あなたを愛した方の愛によるのである
安心しなさい 恐れることはない あなたは ただ自分のすべきことを行いなさい
羊飼いの少年は頷いて 一歩前に進み出ました
私の羊たちよ 聞きなさい
その声に 少しどよめいていた空気は止みました
あなたがたは 自分の語ることが正しいことだと思っています
それは良いことです
しかし それをあなたがたは実行する時 その目的をすり替えて 完成させることをしていません
それはいけないことです
あなたがたは 自分の腹から出ることのために 自分の腹で歩くようになってはいけません
あなたがたには手があり 足があり 口があり 目があります
鼻や耳や その他いろいろな部分があります
それぞれ違いますし 同じように働きません
しかし すべてはひとつの体として ひとつの目的のために動いています
それは生きることです
あなたがたはどうですか
同じように動き 自分勝手に進んで 自ら四肢を切り離すかのように振舞っています
あなたがたは 自分の受け継いだところを行い 目に映るところではなく 心に刻まれたもののとおりに歩みなさい
私がいまあらあなたがたに火を焚べます
それはあなたがたの体を焼くためのものではありません
あなたがたが以前持っていた情熱を 再び得るために そのうちに私が受けた息吹を注ぎます
羊飼いは両手を上げて 感謝を捧げ 喜び叫んで言った
私の父よ あなたが私にくださった祝福を 彼らにも注いでください
私は私自身をあなたに捧げたように 彼らをもあなたに捧げます
すると 激しい風が吹き付けて 火が人々と羊の群れに降りました
それは人と羊とに焼けつかず 煙も上がりませんでしら
それは 心の殻を焼き捨て 鈍くなった石の心を肉の心としました
人々の目は 濁っていたのが溶けていき 少女の持っているコップに住む 小さな魚は それを見て口を開けます
それは 汚れた水でしたが 魚の食物であり 魚によって処理されるものでした
小さな魚は 人々の心の殻の燃えかすを食べて飽き その火の香りに満たされました
その火は全き愛であったからです