第26話 その3

そのものはなんだったか 野に住む狩人か
そのものはなにをしていたか 洞穴に住み 穴を掘っていたか
そのものは 岩地に住み その影に宿り 人目には触れられず 見出されなかったものだった
そのものは日の光を見ることもなく ただ自分に日々与えられたことを行い 石を枕にして寝ていた
そのものは羊を飼い 山場や荒れ地に生えた草を見つけては 羊に食物をやり 水の湧くところを見つけては 自分の子たちに飲ませていた
彼は自分のいるところをわきまえ 自分の治めるところを知っていた
彼は一人でそれを行い 自分の子たちをいつも見つめて愛していた
そのひとりでも欠けようものなら 夜通し探し回り 叫んで呼び求め
岩陰に震えてるのを見つけると駆け寄って抱きしめて連れ帰っていた
彼は言う
わが子よ 私たちの家へと帰ろう

羊は顔を上げて周りを見渡した
そこには人影はなかったが 羊は何かに引き寄せられるように少女たちとは別の方向へと歩き出した
少女たちはそれに気付き 後を追った
羊は野の真ん中に穴が空いていて その手前で立ち止まり めえ と鳴いた
少女たちもそこで立ち止まり その穴を見た
すると その中に小さな羊が震えていた
少女たちは手分けしてその小さな羊を引き上げ これを穴からすくいあげた
羊は小さな羊が野に上げられたのを見ると すりよってなぐさめた
小さな羊は次第に落ち着きを取り戻していき その場ですやすやと寝息を立て始めた
羊もその隣に伏して小さな羊の寝顔を見つめた

少女は羊が小さな羊を見ているのを見て微笑み 小さな羊を撫でた
そしてふと 自分の持っている花一輪を 小さな羊に飾った
それは 羊に花が咲いているように 小さな羊にも咲いているように見えた

それを見た方は言った
幸いなものよ 自分の持っているものを その分に合わせて分け与えるものは
父がその栄光の富に合わせて溢れるばかりの恵みを施してくださるように それを行うものは
父がその栄光にふさわしく誉れを得るように 父ご自身がその報いをお与えになるだろう
父の良きを知ってその味を知り それを堪能して自分も進んでそれを行うものは
その蜜をもって語り 聞くものの心をいやし 砕かれた骨を組み合わせて立ち上がらせ
全き愛が自分を包んでいるように その愛をそのものにも着せるだろう