第25話 その6

領主である老父は 久々に町に出ました
体が衰えつつある中 日々の行いを全てこなすことがきつくなっていたので 町に出ることもしなくなってしまっていた
そして 数年ぶりに見たのは 異常なまでに目先にとらわれ 早足で過ぎ去る住人の姿でした
これは いったいどういうことなんだ
私の子たちは どうしてこうも急いでいるのだ
王女は老父に言いました
これは 日々のあなたを映したものです
あなたはすべきことだと思っていることに固執して そのために大切なことをなおざりにしてしまいました
それは 木が日を浴びることだけを思い 地に注がれた水を吸い上げるのをやめてしまうように 自らの体をひどく衰えさせるものです
上を見ることはよいことです ですが それだけが人を成長させるのではないのです
あなたの受け取るべきものを受け取って 初めて人はその分を流すことができ 成長することができるのです
老父は王女に言った
その水とはどこにあるのですか
私たちに注がれたその水とは どこにあるのですか
王女は言いました
私がお連れする先に来れば わかります

そうして王女たちが向かった先は 花屋のところでした
王女は花屋で働く女性を見ると 声をかけました
失礼します 少しお時間よろしいでしょうか
女性は花に水を注いでいましたが 手を止めて王女を見ました
王女は言いました
あなたに渡したいものがあるのです
女性は王女に答えました
なんですか
王女は持っていた鉢を持って 女性に差し出し 言いました
これは あなたにこそふさわしい
女性は その花が自分の店のものではないことに気づき 首をかしげました
そして言いました
これを 私にくれるのですか
でも 私は花屋ですし 他にたくさんあります
それに この花はきれいで 持っているあなたの方がふさわしいわ
王女は女性の目を見て答えます
これは 美しいあなたにこそふさわしい
王女は少女の方へ目配せをします
少女は頷き 女性へ進みよって言いました
これを見て あなた自身の姿を見てください
それは 少女の持っていたコップでした