第25話 その3

道端に 一つの果物が落ちていました
その果物は 行き交う人々に踏みつけにされて 食物として食べることはできなくなってしまいました
しかし 割れた実から種がこぼれ 土にふれて 風が吹くとその上にも土がおおいました
雨が降り 風が吹き 元の潰れた果実はなくなってしまいましたが
種はその地に残り続け ある日 日の光を見ました
人々はそのすぐそばを通ることもありましたが その地に種を植えた方はこれを守り
御手を伸ばして種の周りに垣をめぐらせ 人の踏みいることの無いようにしました
これは 人の目には隠されていて 誰一人として知るものはいませんでしたが
種はこのことを見ていました

日が流れ その地にききんがやってきました
熱をともなった強い風がその地に吹き 雨は降らず 地の産物は実を結ぶ前に枯れていきました
人々は食べるものを求めてさまよいますが どこにも食物は見当たりませんでした
人々はついに自分自身の肉しか食べるものがないのに気づき 天に叫び求めました

これを聞いた方は 人々の叫びのために手を伸ばし 以前種の周りにめぐらした垣を取り除き
人々の前にあらわにしました
ある人はこれを見つけると 種であったものは 大きな木となっていて 実を結んでいました
その人は木に駆け寄り 実を一つ取って食べると 水がはじけるように口を潤し 体全体に染み渡りました
その人は町の方へ叫んで行き この木のことを知らせました
そのために多くの人々が木の元へ集い 実を分け合ってすべてのものが生きながらえました
種だった木は 人々を見て驚きました
以前自分を産んだ実を踏みつけ 通り過ぎていった人々が 私の元へ集まり 私の実を食べている
あのとき 死ぬはずだった私の実が 今 この人々のいのちの糧となっている
これはなんと驚くべきことだろうか
木となった種は ことばを紡ぐことはありませんでしたが 溢れる感謝と注がれた愛の故に 葉をこすらせて賛美しました

子どもたちが歩いていると 羊は道の真ん中に植木鉢に咲く花を見つけた
羊は めえ と鳴いて近づいていった
ほかのものも後についていき その花を囲んで これはなんだろうか どうしてこんなところにあるのだろうかと言った
そして 子どもたちはその方を見ようとして 近くにいないのに気づき 自分たちははぐれてしまったことに気づいた

あるところに年を経た男性がいました
男性は言いました
私は富も地位も財産も築いたが
それを残すものがいない
私には伴侶がなく 私には子供がいない
私の築いたものは全て他の人のものになるだろう
男性は天を仰いで言いました
どうかあなたが見てくださっているのならば
あなたがはじめに行ったように
私に光を見せてください
あなたが初めに全てを作られたように
どうか私に子どもをください
それを言い終えると 男性の胸は張り裂けそうでした
その日の夜 皆が寝静まった頃
一つの声がありました
あなたに光を見せよう
その言葉は男性には聞き取ることができませんでしたが
確かに男性に語られた言葉でした

次の日の朝家をノックする音が響きました
男性は起きて出てみると 一人の女の子がそこに立っていました
女の子は言いました
あなたが持っているもの全てを私にくれるなら この花をあげましょう
それは鉢植えに植えられた一つの花でした
しかし男性には 自分の望んでいたものに見えました
男性は女の子に尋ねました
私の持っている全ての財産の値が 本当にその花と一緒なのですか
私の望んでいるものは その花は足りないのではないですか
女の子は言いました
あなたが持っているもの全てを持って私についてくればわかります