第25話 その2

その方は言った
いまは見させていただくだけにします
しなければならないことがありますので
王女はそのことばを聞き じっくりと選びたい気持ちを抑え その方のところへと戻った

少女がその方のところへ戻るときに振り向くと 少女の持っているコップから魚が顔をのぞかせて 花屋を見た
その目には 色とりどりの花が映り 魚の住んでいた世界では見たことの無いものであった
また 見ることのできないものであった

小さな魚は水の中で生まれ親たちや大人たちも水の中で暮らしていました
親たちや大人たちは水の底にあるものを食べて過ごしていました
しかし小さな魚はそれを食べることなく水の外へとあげられました
小さな魚はそのことをまだ知りませんでしたが
自分の今見ている世界は今までいた世界とは違うものだとは分かっていました

その方は言いました
人々に気をつけなさい
人々とぶつかることのないように気をつけなさい
きちんと前を向き自分の進むべき方向 わたしのいるところを見て後からついてきなさい
子供達はそれを聞いて頷き 互いに手を握りその方の後ろを歩いて行きました
小さな魚は少女の右の手にあるコップの中から外の様子を眺めていました
外を行き交う人の大人達はまるで川の底にいる自分の大人たちのようでした
その方は言いました
目を留めるものに気をつけなさい
また食べるものに気をつけなさい
食べるものとは日々の糧のことで あなたがた自身の成長のための食物のことです
そこに含まれる様々な人の思い 不要なパン種を除きなさい
あなたがたは天から受けたものに手を加えてはなりません
それは あなたがたの手垢で台無しになってしまうだろう
だから 受けたものはそのまま受け入れなさい
わたしの父はあなたがたを愛し 良いものだけを賜ります
子どもたちは頷き 互いに微笑んだ