第24話 その7

その方はコップを取り出すと 川から水をくみ上げた
そしてそれをみんなの真ん中に置き 言った
もうすぐ次に行く場所に着く
そこで このコップの水をこぼすことのないように持って行きなさい
羊と少女は その中を覗き込むと 小さな魚が泳いでいて 二人が顔を近づけた時 その魚は飛び跳ねた
羊は めえ と叫んで少女の後ろへと隠れた
少女も少し身を引いて コップを眺めた
そこにはちょうど月が写り込んで 水の上に浮かんでいた

水の中に潜むもの 彼らもことばによって紡がれ その場所で増え広がるように祝福された
そこにはことばはなく 声を上げるものもいなかったが
大空をつかさどらせたものの光が差し込むと 彼らは活発に動き
底に潜む淀みを喰らい 彼らが任されたところを守っていた

その中の一つの群れに 小さな魚はいた
魚は生まれて間もなく 群れの中でも一番幼かったが 群れの誰よりも元気があり 彼を作った方が定めた境まで
毎日泳いでまわっていた
小さな魚は時々上を見上げては 大人たちに尋ねた
この幕の上は どうなっているの
大人たちは答えた
あなたの知らなくて良いことだよ あなたはここに住むものなんだから ここでの暮らしを考えていなさい
しかし 小さな魚はいつか幕の外へと行ってみたいと思った

さて みんなが寝静まった頃 小さな魚は一人泳いで出かけた
それは 幕の外から差し込む光があまりにもきれいだったからだ
それは 遠くの川の淀みが取り除かれ 光がよく通るようになり 同時に今日は月が満ちていたからである
小さな魚は引き寄せられるようにして水面へと泳いでいき そこから顔を出した
初めて見た幕の外は 水の中とは違い あまりにも大きく 飛び出すことができなかった
そこへ 声が聞こえた
あなたの望む先へと進む覚悟はあるか
あなたの家を捨ててでも わたしの元へと来る覚悟はあるか
小さな魚は初めて聞いた声にびっくりしたが すぐに頷いて答えた
その声は微笑むように感じ 魚はより一層光に照らされることとなった