第24話 その1

人の涙は何になろうか わたしはその叫びを聞かなかった
しかし 人がその涙に溺れる前に わたしは手を伸べ それを拭って悲しみの井戸から救い出した
あなたの心を沈ませてはならない
このときにあっても あなたはわたしを見続けなさい
わたしはあなたの手の届くところにいるのだ
顔を上げなさい
あなたには何が見えるのか その口で言ってごらん
わたしが備えたあなたのことばを あなたは紡いでごらん

あなたがそれを語るとき あなたの目は開かれ 自分の置かれた地を見ることができるようになろう
あなたは盲であったが 知恵を得た
わたしのことばを得て それを掴んだ
だからあなたの汚れた心はすすがれ あなたの眠っていた眼は開かれた
わが子よ あなたの手を伸ばしなさい
わたしはあなたがどんな状況の中であっても ともにいるのだ
悪夢があなたに何の益を与え 何の災いをもたらそうか
敵の手があなたに迫っても あなたのいのちにどうして触れられようか
あなたはすでにわたしの内にいて わたしの安息にとどまっているのだ
あなたは言った 我が城 我が救いの岩 と
それであるのに どうしてあなたはわたしに信頼しないのか
あなたは平安の中に眠り そして 目をさます
わたしの備えた食卓に座り わたしとわたしの子らとともに 食物を食べる
わがこよ あなたはすでにここに招かれ そして選ばれてここにいるのだ
あなたが得たもの あなたが立っているところ それを知りなさい

それぞれが食事をし 眠りについた頃
女性は一つの夢を見た
それは悪い夢であったが そのために女性は悩むことはなかった
良い地を耕した畑に 汚れた水が流れ込んだ
それは川が氾濫し 人々がものを捨てるために使っていた川の水が その地一体にあふれたからだ
しかし それは 畑のすべてを覆うことはなかった
畑の管理者は 川があふれたのを見て すぐに境を定めて これ以上水のこないようにし
超えたものも 雨によってすべて流され 汚れの残らぬようにした
また 多くの水が止まらぬようにし 勢いのある水の起こらぬようにして 畑の作物が害を受けることのないようにした
それは時期になると 豊かな実を結び その香りは 地を満たした

女性は 虚ろな目をして 起き上がった
そして 船の幕の外に出た
少女はそれに気付き 幕の外に出ようとしたが 女性が誰かと話す声が聞こえたので 幕を押す手を止めた

女性は流れる風景を見つつ 口を開いた
ぼくが記したものはことごとく砕かれた
その結末は あなたによって結ばれ 彼らにふさわしいものとなった
その方は言った
あなたが記したことが あなたの見る夢となって現れるのに あなたはそれを語らないのか
それを心に留めるものがあれば 思い直すものも起こるかもしれない
女性は答えた
いいえ 私は口を開きません
人がくちびるの実に飽き足りるのであれば 私はその責任を負いきれましょうか
その方は言った
あなたが心に示されたことを すべて明かし 人々に語り伝えることをしなければ その責任はあなたが負う
それは あなたが考え 心の中で思い起こして 口に出すことではなく
わたしの父がすでに備えて そのために言い送ったことなのだから
すべてことばを紡ぐものがその責任を負う
すべてことばを託し 語らせたものが その責任を負う
あなたは語らなかった故にその責任を負うはずだった
しかし あなたはそれを知らず 目を背けて責任を負おうとしなかった
それゆえ いまはあなたは責められない
しかし これからは あなたはこのことを知ったゆえに そのとがを負わねばならない
女性は答えた
では どちらのぼくが このことを伝えればよろしいでしょうか
すでに書き起こされ 心のうちに刻まれた言葉を いつ だれが伝えましょうか