第21話:はじまりのいえとさかなつりのむら

日もはや傾いていたので 女性は明日の早朝に出発することをすすめた
二人もそれに賛同し 今日はゆっくりと体を休めて 旅に備えることにした
お茶の皿やカップを下げ 洗いつつ 女性は話した
私は たぶん死なないのだと思います
長い年月 この国を見てきました
何代も人が生まれては死んでいきました
そして 歴史の一部を見て 王女さまが残したものたちが どのようになっていくのか
どのように花開き 実を残して 種となり 再び芽を出して成長するのかを
見守ってきたのです
周りは大きくなって老いるのに 私の体は 大きくなるだけで 年を取りませんでした
まだ完全に成熟していない体は まるで雪に埋もれた川のように 時が止まっているように感じる時もあります
しかし 私は生きています
王女さまが愛した国を美しいと思いますし 私の故郷から流れてくる風を嫌だとも感じます
時間が多く流れると 自分が生きているのかわからなくなりそうになることもあります
でも こうして生きているなら 息が止まるそのときまで 王女さまのように 自分のすべきことを全うしたいのです

皿をゆすぎ カゴに立てかけて 女性はテーブルに着いた
私は 私が何者なのかを知りたい
私がなぜ生きながらえているのかを知りたい
この旅は そのためでもあるのです
そう語る女性の目は 少し揺れていた

夜になり 三人は床についた
女性は夢を見て その内容はこうであった
熱病に悩まされる民がいる
そのものたちは 自分たちが招いたことで病を患っていたが それに気付けないでいた
彼らが行いを改めない限り その熱は引かず すべてのものが焼き滅ぼされてしまう
そこで女性は起きた
悪い夢だったため 寝汗で床をぬらした

女性は眠ると 再び夢を見た
その夢の内容はこうであった
あるものたちが船に乗っていた
しかし 船に積んでいるものが重く 底に穴が開いてしまった
穴から人が落ちて 今にもおぼれそうでいるが
ほかの人々は助けることができなかった
このままでは 船が沈み 全員おぼれてしまうだろう
そこで 女性は起きた

女性は夜風に当たるために 暗い外に出た
月は満ちていて 柔らかい光が町を照らしていた
夜の風は湿っぽく 先ほど見た悪夢を和らげるように 女性の周りを吹き抜けた
女性は 近くを歩いた
そして 町を眺めた
女性は この町が好きであった
昼には多くの人が行き交い それぞれの道へと進んで行く場所
そして 女性が連れてこられた町で 竜になるきっかけとなった地であった

空に 一つの星があった
その星は小さく 大勢いる星々の一つに過ぎず その輝きも小さかったが
月は それに目を留めた
夜を司るものは この小さな星に目を留めた
星は 月に見られていることを知らなかった
それゆえ 自分の価値はわからず 輝きも揺れていた
月は 星が他の星々とは違い 照らされてではなく 火によって燃えているのを知っていた
その光は 昼を司るもののようであって 力に満ちていた
月は その星に語りかけた
勇士よ 目を覚ましなさい
あなたの光が何によって得ているのかを知りなさい
あなたに油注がれた方を知りなさい
その油は あなたのうちに絶えることなく注がれて あなたを燃やしているのだ
ああ ここにあなたを写す鏡があれば良いのに
あなたは自分自身を作った方を 語ることのできるものがおればよいのに
どうか あなたや私を作られた方ご自身が あなたと話をされますように
星は 自分よりも大きくみえる月を見た
それは大きく その輝きの前には 星の輝きは消えてしまうだろうと 小さな星は思った
すると その星に語りかける声があった
あなたは周りにいるものたちが見えないのか
あなたの周りに集うものたちが 光を持たないものたちが見えないのか
あなたは その星たちに あなたを燃やしている火をくべよ
それを持って 周りのものを灯しなさい
あなたが持っているそれを 腐らせてはならない
わたしがあなたに与えたのは 実にこのためではないか
星はその声に驚き 急いで火を振りまいた
火は周りのものを燃やし 星々に燃え移って 火が灯っていった
しかし 星自身の火は消えることなく さらに燃え上がって余りあるほどであった
星は 周りにも星があって その星たちが自分から出た火によって輝きを得たことを知った

あなたのうちにある火を燃え上がらせなさい
それは 全地を作られ 天と天の万象を作られた方から出たものである
あなたはそれによって誇ることはできない
それは あなたを作られ あなたを愛された方が あなたのうちに与えたものであるから
わが子よ あなたを暗くするものは何か
あなたに手向かうものは何か
あなたはそれらを わたしの火で燃やし尽くすのではないのか
わたしの与えた信仰は その程度のものなのか
すべてのものが膝をかがめて崇めるわたしの信仰は その程度のものなのか
それは終わりを焼く炎であり
はじめとおわりを司るわたしの火である

月はその星を離れると 夜空に響くように叫んだ
全天よ 声を上げよ
あなたがたが賜った火を いま燃え上がらせなさい
あなたがたを作られた方は あなたがたに尽きぬいのちを与えられた
それは多くのものが焼け落ちてもなお残り続けるものであって
彼の御手の中にとどめられるものである
それを消すものはのろわれよ
それに不義をぶち込むものはそれを焼かれる
それはあなた自身を焼くものとなろう

女性がふと目を上げると 遠くの山にうっすらと白い線が引かれていた
次第に線はふとくなり 空の星々は薄く消えていった
空には雲ひとつなく 旅立ちにふさわしい晴れ晴れとしたものだった

女性は家に戻り 旅の支度と 朝食の準備をした
朝食を作り終える頃になると 少女と羊が起きてきた
羊は寝ぼけ眼で 半分夢の中のような顔をしていた
女性は パンを焼き上げ スープや野菜を盛り付けて 少女たちに言った
朝ですよ ご飯も用意できましたから 二人ともテーブルに運んでください
この食事で元気をつけて 出発しましょう

二人は食事をテーブルに運び 女性は最後にお茶を用意して テーブルに運んだ
女性はカップにお茶を注ぎ 香りが部屋に満ちていった
少女はみんなが席に座ると 感謝のことばを述べて 食事を始めた

焼きたてのパンは熱かったようで 羊はちぎりにくそうにしていた
少女はそのまま口に運ぶと 懐かしい麦の香りが 口いっぱいに広がった
少女は目を見開き 女性は笑って言った
気づきましたか? それは その方があなたがたを通して残していった麦のひとつなんです
それは 王女さまの麦だったかな
パンを作る麦の中では一番のものなんです
少女は それを聞いて 王女を思い出し涙を流した

王女は その方の与えた麦を 種類ごとに畑に蒔き その活用法も研究した
その方の残した麦は どれもこの地にあるものとは違ったが
この地にあるものの原種となるであろうものであることがわかった
王女は その方が作ったように 様々な方法で調理 加工し より味わえるように
そして より多くのものたち より広い範囲の人々が食べられるようにした
調理した麦の配給とともに 王女は教育を運んだ
子どもたちに 良いことの本質を教え そこから外れることのないように
知識のはじめを 教えていった
その結果 捨てられた子らは減っていき 捨てられていたものたちも 自分の価値を見出し
彼らに与えられていたものによって 町は建てられていった

女性は 王女がしたことを少女たちに話した
この麦も その途中で用いられたものだと
その方が語ったことは この国を満たしているのだと
少女は泣きながら話を聞いていた

しかし 女性は少女の泣く姿を見て胸を押さえ 悲しげに目を細めた

三人が食べ終わると 家の戸を叩く音が聞こえた
女性が戸を開けてみると そこにはその方が車の前に立っていた

さあ 出発の日は来た
それぞれの荷物を持って 進もうではないか
少女と羊は大喜びで出て行き その方に飛びついた
その方は二人の頭を撫でて 微笑んで言った
わたしも少し準備をしていて 後から来ることになった
これからは あなたがたとももに行こう
女性は大急ぎで皿を片付け 荷物を持ってきて車に乗せた
そして その方に頭を下げた
この度は来てくださりありがとうございます
その方は女性に言った
いままでよくやった
よくここまで国を建て直してくれた
女性はほおをかいて言った
あなたとあなたが残したものたちが いてくれたからです
私は 何もしていません
その方は言った
あなたがしたことは この国になくてはならないものばかりだった
あなたは不義をこして わたしの知恵を取り出して この国のために用いたではないか
それゆえに わたしの心はこの国を覆って それが実現したのだ
それを否定してはいけない
あなたはよくやった
その方は女性に近づき 女性の頭も撫でた

その方は 三人を車に乗せ 車を進め始めた
少女は思った
これまでは 自分の生まれた国を巡ってきた
多くのときが流れ 国のほとんどは変わってしまったが 変わらないものもあった
その場所を 自分と同じような女の子と旅をした
しかし これからは 新たな地へと旅立つのだ
少女は胸をおどらせていた

その方は車を運転しながら 歌を歌った
その声は 透き通った氷のように 白く柔らかい雪のように あらぶる心を鎮め 落ち着かせるようなものだった
また 母が子を寝付かせるときに語りかけるように 優しく三人と道行くものたちとを包んだ

ほむべきかな 全地を作られ 今なお紡がれる方は
あなたは目に見える万象を完成させ 過ぎ行くものの中で 見えないものにまで細工をされた
あなたによってすべては堅く立てられ あなたの指によって揺るぐことはありません
あなたの御手によって 今日という日は形作られ あなたの息吹によって 今日を生きながらえるもののうちに新しいいのちを湧き上がらせます
あなたによって すべてが新しくなり 古いものはあなたの霊により飲み込まれました
あなたは日々降りかかる火の矢から 我々を全く守ってくださり あなたのことばによって 敵を退けられます

あなたの恵みは とこしえからとこしえまで
あなたの生ける水は はじまりより すべての地をあまねく巡り 潤してあまりあります
その水を飲むものは幸いです
あなたによって目が開かれ こびりついた汚れは すべてあらいきよめられます
その水を求めるものよ
価なしに ここから飲みなさい
渇くものよ 疲れているものよ あなたの荷を降ろして 今すぐ飲みなさい
あなたが負うべきものは わたしが与える それを離さずにいなさい
あなたが負うべき仕事のために わたしから食物を受け それによって生きなさい

車の中に風が吹き抜け 三人の間を通り過ぎて行った
風には水気が含まれていて 近くに川か湖があることを知らせていた
その方は車を導き 小高い丘を登り終えると 車の速度を落とされた
三人はそれに気づいて 身を乗り出して前方を見た
そこには 村が広がっていた
その奥には川があり 船が港に並んでいた

その方は 村に向かって進み その近くに車を止めた
村からは 水産物の香りが漂い これまでの町々にはあまり感じなかった空気を三人は感じた
その中で 女性はふと昨晩見た悪夢を思い出した
なぜそんなことを思い出したのかわからず 女性は首を傾げた
その方は言った
この村で 船を得よう
この先は 船で進んだ方がよいから
少女たちはその方のことばを聞き頷いた
女性はその方に尋ねた
どのようにして船を手に入れるのですか
その方は答えた
それより先に この村の抱えている問題を解決せねばならない
わたしたちが乗る船は そのあとで明らかになる
女性はそのことばを聞き わかりました と答えた

その方たちは村の中心に行った そこは港に近い場所で とれたての水産物を皆が卸してさばいていた
羊は光景の物珍しさにトコトコと近づいていった
そして 一つの魚を見て 嗅いでみた
それは匂いがきつく 羊はびっくりして身を引いた
少女は羊が嗅いだのが気になり 近づいて見てみた
それは 他の魚よりも大きく ヒレがトゲトゲしていて 禍々しかった
店には この特徴的な魚の他に 小さな魚がまとめて並べられていた
少女も その魚たちをじっくりと見つめていた
いままで陸の食べ物を多く食べていて 魚などの水に棲むものはあまり見たことがなかったからだ

女性も市場のものを見ていた
どれが今日のおかずに適しているのか と頭に思い巡らせ
興味を示したものには その店の主人に聞いて 調理方法を聞いたり 語り合ったりした
その方は 三人がそれぞれ迷子にならないように それぞれに見える範囲で動かれ ときには声をかけて呼び寄せ 村の様子を見て回った
村は小さかったが 人々の顔は生き生きとしているように見え 肌は日に焼けていた

そうして 村を巡り終え その方は車のところに戻り食事のために 調理道具を引き出した
調理する場を整えている間 ふと少女は女性を見た
女性は山盛りの食材を携えていたが 魚介類のため すぐに腐ってしまうだろう と少女は危機感を感じた
その方が調理場を整え終えると その方と女性とで 村で得た食事をさばいていった
今食べるものは女性が切り分けて鍋にぶち込み 残りのものは その方が処理して保存できるように加工した
その方は言った
少しの間 魚の匂いがするかもしれないが あなたがたに害はないから我慢してね
少女と羊は女性をちらりと見て 笑った

そうして すべての調理を終え 鍋のものを器により分けて テーブルの台に並べた
椅子代わりの木箱の上に 皆が座り終えたのを見て その方は食事の宣言をした
そのことばが終わると同時に 羊と少女のお腹がなり その音が鳴り止む前に 三人は食べ始めた
鍋は 採れたばかりの魚や貝を主に その方が持ってきた野菜や調味料を加え
女性が村で聞いてきた調理方法を混ぜて作ったもので
この村の独特の風味が鼻を突き抜けて 心を満たしていった
村で採れた食材は 少女たちがいままで町々で食べたものよりも肉厚で歯ごたえがあり 腹にしっかりとたまるものだった

昔 川に大きな魚が住んでいた
その魚はあらゆるものを食べ 肥え太って 多くの小魚を生んだ
小魚は大きくなると 親である大きな魚のように肥え太って 丸々とした姿に育った
その味は舌においしく感じるもので より多く食べようと誘うものであった

一人の釣り人がいた
釣り人は 大きな魚だけを狙い 小魚や他の魚には目もくれなかった
夕 日が沈む前に 釣り糸を垂らし 朝 日が昇って暑くなるまで待ち続けた

小さなものは よく釣り糸に引っかかるが 大きな魚 釣り人の狙っている魚は見向きもせず
底から釣り針を見つめていた
釣り人は 釣り針に引っかかるたびに竿を上げてみてみるが そこには願うものの姿はなかった

釣り人は 他の魚が釣れた時 すぐに捨てていたが それを横から拾うものがいた
釣り人は そのものを知っていたが なんとも思わなかったので 何も言うことはなかった

横から拾うものは 町に持って行って 売り 自分の利益としていたが 釣り人にはひとつもわけることはなかった
彼は頭のおかしい人だから 自分だけで儲けをしよう と考えていたからである

釣り人は 今日も釣り糸を垂らし 大きな魚がかかることを待ち続ける

大きな魚は泥をくらい 泥を生むものであった
泥は すなわち心から出る悪しき言葉であって それはおいしい食べ物のように 腹の奥に下っていく
それは食べるものを肥え太らせ 心を鈍らせて 最後の日によく燃える脂肪として蓄える
それを持って利益を生もうとするものは その稼ぎが虚しいことを知らない
また それを得て 私は素晴らしいもの うまいものを得たと言って 金を支払うものも また同じだ
川の底に潜み 土を蹴って水を濁らせるこのものは何者か
彼は時期に引き上げられ その口から出した全ての悪しきことのために 罰せられる
そして 彼によって益を得ていたものも 同じ報いを受ける
それは 彼らが同じものを食べていたからである

さて 昼食が終わり 食器を片付け終えると 羊はいやな臭いに気づいた
臭いのする方へと歩いて行くと 先ほどその方が作っていた保存食があった
臭いはそこから漏れだしていた
それは 魚のものではなく 腐敗したものに感じた
少女は羊に気づき 近づいてみると 少女も変な臭いを感じ 鼻を摘んだ
後ろからその方と女性も来て 羊と少女の見る先を見た
その方は言った
この村で売られているものは 一部はこのようになる
すぐに食べれば うまいだろう
しかし 後になれば正体を現し 腐臭を放つ
あなたがたが食べたものは きよいものであって わたしが切り分けて与えた
しかし 他の あなたがたに与えなかったものは すべて食す部分ではないために 腐ってしまった

わたしの作った目を持つものたちよ
あなたがたは見分けて それを食しなさい
自らの欲に流され 教えられるままに食べたり飲んだりしてはならない
それらはあなたがたのからだを形作り あなたの心の内にたまるものである
人は 自分が吐き出したものによって また 世にはびこる悪いことばによって汚れる
あなたがたは それに気をつけて すべてを見極め それがどこから出たものなのかを吟味しなさい

わたしが与えるものは いのちの実を結ぶものである
しかし わたしが与えないものは 過ぎ去るもの 吹けば飛ぶものである
それらをあなたがたが求めて 得たからといって それが益になるとはかぎらない
求めるものには与えるが それが父のみこころだとはかぎらないのである
それから悟るものは幸いだ

その方は 腐ってしまったもの 食べるべきではなかったものを焼き捨てた

釣り人は今日も釣りをしていた
釣り人は 村の人ではなかったが 場所を借りて釣りをしていた
それは 釣り人の他に 釣り糸で漁をするものはいなかったからである
他のものたちは船を漕ぎ出し 網を使って漁をしていた
それゆえ 釣り人と関わることはなく 互いに干渉することはなかった
釣り人は 村のものを食さなかった
釣り人は 自分の住んでいるところから持ってきたパンをほおばり 仕事に従事していた
それは この村のものは 自分の捨てたものが売られているので それを食す気にはなれなかったからである
釣り人の食べるパンは 少し離れた地から運ばれた麦によって焼かれたものであって
他のものとは違い 内から力が湧くものであった

その麦は王女たちが育み その方によって実ったものだったが 釣り人は知ることはなかった

釣り人には 目があった
それは 自分の食べるものを見極める目であって
自分の釣ったもの 自分の捨てた魚は食さないとしていたことは 見極めから来ていた
また 釣り人は 狙っている大きな魚についても その目で見抜いた
すなわち 大きな魚が この川の淀み 水の中の環境を支配し 自分の食べるべきではない生き物で満たしていると

しかし 見抜くことだけが 父のみこころではなかった
父は すべてのものを釣り人に与え その口に運ぶときまでにきよめてくださるのである
それゆえ その方がきよいものを子たちに与えたように 釣り人にも与え
敵に落ちているものたちをより知ることで 敵を打ち砕く手立てを与えようとしていたのである

人は 目だけでは足りない その心を石ではなく肉の心として 柔らかくしなければ 父の声を聞くことはできない
それをしてくださるのも 我らの父だけである

その方は後始末を済ませると 子たちを集めて もう一度話された
わが子たちよ わたしの与えたものを十分に用いて生きなさい
また わたしの声に絶えず耳を傾けなさい
わたしはいつもあなたがたとともにいる
わたしが何をしているのか どこへ導くのかについて いつも心を向けていなさい
わたしはあなたがたを導き 夜明けに輝く星のように あなたがたを真昼の日の下へとともなう
わが子よ あなたがたの持っているものを わたしとともに用いなさい
あなたがたは まだおさな子である
これから正しく成長するためにも あなたがたが何者であるか どういう道に歩み 何を用いて行くのか
すなわち あなたがたが注がれた油について よく知りなさい
それは あなたがたを燃やし 決して暗くすることのないものである
だから あなたがたは 明るみで 大胆に すべてのことをしなさい
それはわたしが先に行ったことで わたしの望むことである

女性は言った
では 私に食材の見極めを教えてください!
その方は女性を見て答えた
では ついてきなさい
その方は 村の方へと歩き出した
女性は喜んでついていき 羊と少女も後に続いた

村には もうすでに生の魚は売られていなかった
その代わりに 魚を干したものや 団子にして焼いたもの また別の調理を施したものなどが売られていた
女性は生の魚がないことに気づき 肩を落とした
その方はそれを見て言った
あなたは自分の目当てのものがなくなったから 気落ちしているのか
よく見てみなさい
人の手を施しているが 朝の市場となんら変りない
まずは あなたの目で見て 自分の食すものを手にとってみなさい
女性は店を見ていき 自分の食べるべきものを見ていった
干したものが多かったが 魚の種類も豊富であった
中には これは魚なのかというものもあった
四方八方にトゲが出ていて毒々しく 食べる部分が見当たらないものや ひらひらして水の中の草のようなもの
蛇のように細く長いものや 獣のように鋭い牙を持つものなど
まるで工芸品を並べているようであった

吊り下げられているものを見ていると ふくれたりしぼんだりしているものがあった
女性は気になりその店の方へと歩いて行った
羊と少女も見ていて 足元に並べられた細工品に目が止まり
目を輝かせて見ていたので
その方は少し立ち止まり 少女たちが迷わないように留まった
女性は その動いているものに近づき 顔を寄せた
それは袋のように丸く 目も大きく口は少し開いていた
それが伸縮して まるで呼吸しているかのようであった
これ おもしろいですね 動いてます
女性はそれに手を伸ばし 触ろうとした
すると 店の人が叫んだ
それに手で触ってはいけない
女性の手は 制止が間に合わず 吊られているものに少し触れてしまった
伸縮しているものは 大きな目を動かし 女性を見て 笑うように口を曲げたように見えた
そして 伸縮しているものは 瞬時に膨れ上がった

ぐしゃっ
女性の目の前で潰されたそれは 破片をあたりに散らして朽ちていった
それは その方の伸ばした手によって握りつぶされ 膨らみきる前に 潰された
女性は驚いて目を見張り 後ずさりした
その方は手を払い 女性に言った
あなたは よく観察してから触れなさい
そして 先ほど叫んだ人に向かって言った
申し訳ございません
その人は 頭をかきつつ その方と女性に言った
いえ 私もきちんと止めなかったのですから
潰れたものは 毒抜きをするために干していたもので 売り物ではありません
うちは看板も出してないですし 今日は何も商品を扱ってはいませんよ
女性は店だと思っていた場所を見渡し 他と比べても 商いの雰囲気がないのに気づき 口に手を当てた
そして その人にペコリと頭を下げた
ごめんなさい
その人は言った
気にしなくても大丈夫ですよ
まぁ 潰れたやつは 少々珍しいものだったので 惜しくはありますが
女性は肩を落とし 沈んでしまった

そこを離れて 再び村を見て回る一行
女性は気落ちしたままほかの店を見ていた
その方は それを見て言った
あなたがしたことは 危ないことではあったが あの場所には行くべきであった
あなたがしたことは 身の危険を招くことであったが 隠れたものをあぶりだすことでもあった
あのものは 何をしているのか それを知る必要が出てきた
女性はその方を見た
その方は言った
あのものは つるしてあったものの毒に気付いていた
そして その処置の仕方も知っていた
すなわち 日に当てて解毒し 腐る原因となる水も乾かしていたのだ
ほかのものは あのようには処置していない
あのものは どこでそれを知り 何のために あれをつるしていたのか
その方は 女性や少女 羊を見て言った
あなたがたが動く時が来た
わたしは別のところに行って すべきことを行おう
あなたがたは この村と川の魚について 調べてきなさい
この場所は 昔は魚もこれほどに種類が多くなく また それぞれが輝いていた
あれほどに腐るものもなく その毒もなかった
この変化は みこころではないのだとすれば 正しい姿へと導かねばならない
その方は それを言って後 川の方へと歩いていった
羊たちは顔を合わせ まず何をすべきかを話し出した

女性は言った
とりあえず 手を出す前に よく観察してみます
拳を握り 元気よく言っていたが その手は震えていた
少女と羊は 苦笑いした
少女は言った
確かに ただ腐りやすいだけじゃなくて あんな危険なものもあるなんて この村で取れる魚は 私たちの国とは違うね
でも その方は変になっちゃったって言ってたし
羊は 二人を見つめていたが 鼻をヒクヒクと動かし始めた
そして 何かを嗅ぎつけたかのように どこかへ向かい歩いた
少女と女性は羊に気付き跡を追いかけた

羊が向かった先は川であった
岸には船が並んでいて 漁師たちが網の手入れをしていた
羊はその場所を見て 別の方へと歩いていった
その先には切り立った崖があり 影になっているところがあった
そこに 一人の釣り人がいた
釣り人は水面を見つめ 竿を握っていた
羊たちが近づいても こちらを見ることもなく 微動だにしなかった
羊たちは 釣り人の後ろに積まれた魚の山を見た
それらは様々な種類の魚があり どれも市場で見たことのあるものばかりであった
しかし それらはどこかしらに傷がついていたり 形が変であったりしていた
そして その場所からは 少女たちもわかるほどに 腐臭が漂っていた

腐臭はその方が選り分けた先ほどのものと同じものであった
少女はそれを見てぎょっとし
杖と鈴を取り出して命じていった
天からの火がこれらのものを焼きつくされますように
すると 一筋の火が魚の山に落ち 燃え上がって全体を焼きつくした
その音に釣り人は振り返り
燃え上がる炎に驚いた

釣り人はすべき目標を見据え そのために労苦していたが その行いにことばはなかった
それゆえ その道は与えられたもの 備えられたものとは異なり
また 釣り人自身も報いを刈り取ることをしなかった
手入れをしない畑が荒れるように 釣り人の釣り上げた魚の山は腐り 不正の利を生んでいるものの脂肪を肥え太らせた

後に 助け手が与えられた
そのものは火をもたらし 曙の光のように彼の道を照らし 闇の中にかがやく灯火のように 足元を明るくしてつまずくことのないようにした
それは 彼の牧者が遣わしたもので 彼に備えられた恵みであった

少女は火が弱まる前に口を開いた
あなたがすべきことを宣言し その目的のための手段をいただきなさい
人が備えられたもの以外に加えることはできないのです
だから あなたは正しく歩み 無駄な労力を捨てて すべきことのために 身をささげなさい
釣り人は いつもなら 自分が釣り上げたものは すべて回収されているのに 今日は違うことと
魚の山が焼きつくされていくことを見た
その火は 自分でしてきたことの間違えを示して 心に刻み 本当に与えられた召し 蒔かれた種にひびを入れた

少女は 残った灰を手に取り それに水を垂らしてこねた
それは団子のように丸くまとまり 少女はそれを釣り人に見せていった
あなたはこれを用いて釣りをしなさい
釣り人はそれを見て 疑問に思ったが口からおろかなことばを出すことなく それを受け取り釣り糸を垂らした
女性と羊は燃えたあとの灰に近づき それを触り始めた
それは先ほどのような臭いはなかったが 人が食すものではないことは 見た目からしても明らかであった
女性は首をかしげていった
こんなものを魚さんは食べるのでしょうか

羊は小さな山を築く灰を見つめ 嗅いで触って 少し舐めた
羊は首を引っ込め 後ろへと歩いていき そして本を開き 筆を執った

大きな魚は 川の底の泥を食らい 沈んだチリを食べていた
それは 人々が捨てたもの 人々が吐き出し ごみとして放り投げたものであった
人々はそれを焼き捨てず川へと流し それが水を汚染していた
魚は その汚れた水に住み その汚れを食い 肥え太って食べたものと同じものを産み 増えていった
もはや魚と呼ぶにふさわしくない姿形となった大魚は 水に住む獣となり 淵を泳ぐものとなった
川は淵となり そこから人は糧を得て 自分たちの蒔いたものを刈り取っていた
そこへ 水の上から糧が落とされた
それは 大魚と同じものでできていて 大魚の好物であった
悪者が自ら仕掛けた網にかかるように 血を流す手で自らのいのちもかりとるように
大きな魚は その糧 吊り下げられたものに目を止め 引き寄せられていった

その頃 その方は川の水を汲んで 袋に詰め それを持って村に向かっていた
その方は店や人には目もくれず まっすぐに進み 女性が手を出して その方が潰した魚を干していた あの場所へと向かった
そこに着くと 先ほどもいた人が座っていて その方を見ると 声をかけた
やあ また来たんですね
その方は答えた
あなたに聞きたいことがあります
この川の水を汚すように仕向け それによって利得を貪っているのは あなたですね
その人は その方を見つめ 手に持っている袋を見た
その人は目を細めて言った
だとしたらどうだというのですか
私は人が行うことを巡らせて その間で利益を得ているにすぎないのです
人の吐く悪口を その家畜に食わせて それを人が食べるのは 何かおかしなことでしょうか
人の捨てたものを食べる豚を 人が食べるように 汚れを食む魚を売っているのが なにか間違っているでしょうか
その方は言った
逸れた道に引いて 人を貶めるのは よくないことです
あなたは村の人を人ともおもわず それを家畜のようにして 負わせた荷によって食を得るのなら
その荷をあなたに返した時 あなたはそれらを支えきることができるのでしょうか
すべて人のしたことの報いは その人の頭に帰るように
その方は その場所を離れて 袋を開け 中にある水を空に撒き散らした
その方は言った
この水が地に注がれる前に すべての悪がその報いを受けるように
すると 遠くで天まで届くほどの水の柱が立ち その轟音は村全体に響き渡った

釣り人が垂らした餌に 大魚はすぐに反応し食いついた
その勢いで釣り人は圧倒されたが 少女たちも釣り人に加勢し 竿を引いて大魚を釣り上げた
大魚は水しぶきを撒き散らしながら空を舞い 地の上に転がった
釣り人は大喜びでそれを見た
それには獣のように鋭い牙が生え揃い その目は大きく空の星の一つのようであった
少女たちもそれを見て その禍々しさに身を引いた
大魚はしばらくの間口を開閉し 目を動かしていたが 大魚の腹の方がもぞもぞと動き出し なにかが生えてきた
それは腕や足のような形となり それらは四つ生えてきた
また 目や口も変わっていき 背びれからは毛のようなものが生えてきた
その変化を目の当たりにし 釣り人たちは驚いて その場所を離れた
大魚はゆっくりと起き上がり 足を踏みならして首を振った
そして村の方を見たとき その目は光ったように見えた

獣となった大魚は一目散に村へと駆けて行った
少女たちはそれに気付き 急いで後を追った

大魚は道にあるものを弾き飛ばし まっすぐにその方のいるところへと向かっていた

その方の蒔いた水は まるで灰のように散って 地に落ちる前に風に吹かれて舞い上がった
その香りは村を包み そして 大魚はそれを嗅ぎ取った
大魚はその源へと走り その方の近くにいる 川を汚れに導いたもののところへ来た
村は獣となった大魚を見て悲鳴をあげ 叫びつつ逃げ惑った
大魚はゆっくりと汚したものへと近づいた
その人は怯えつつ後ろへと引いていき 壁に背がついた
大魚はその人の前で止まり 大きな口を曲げて 目を細め 笑ったように見えた

少女たちは逃げて走る村人たちの間を縫って 獣の走っていく方へと向かった
その先には 女性が干されていた変なモノをさわってしまったところだった
そして 獣に変わった大魚が いまにもそこにいた人を喰らおうと口を開けていた

少女は杖と鈴とを取り出し 短く祈ってから それらを籠手にした
羊は めえ と叫び 瞬時に本を開き 筆を走らせた
その刻んだ筋は光を放ち 本を閉じた時に溢れ出して そのことばは実現した
ことばは光をまとい 少女を包んで その背に羽を生じた
少女は羽を羽ばたかせると 風を切り 一瞬にして獣のところへとたどり着いた
そして その勢いで 獣を殴り飛ばした

獣は 建物の壁を壊して飛んでいき 道の真ん中に投げ出された
獣はすぐに身を起こし 自分を殴り飛ばしたものを見て目を細め 蛇のように長い舌を出した

少女は羽を折りたたむと 羽は光の粒となって消えていった
羊と女性もあとからその場所に来て 獣となった大魚を見た
その方は言った
あれが あなたがこの川で飼っていたもの あなたが肥え太らせたものである
あの獣は あなたの脂肪を食らい あなたの肉を引き裂いて噛みちぎるだろう
川を汚していた人は 震えながら言った
どうかおたすけください なんでもしますから
獣はその人を見て 歯をむき出しにし 地を蹴った
獣はその人に飛びかかろうとしたが 少女はその間に入り 受け流して地に投げ飛ばした
獣はうまく受け身を取って翻り 着地してもう一度飛びかかった
その人は悲鳴をあげ 逃げ惑うが 少女は獣を殴り 片目を潰した
獣は叫びをあげてひるんだ
その方は言った
あなたは自分のしたことを知りなさい
あなたは 自分のいのちで村の人々を贖うことができないことを知りなさい
あなたがしたことは大きい
しかし

少女は腕を引き 構えて 迫り来る獣を見据えた
そして 獣の眉間に正拳突きを放ち 頭を砕いた

あなたを贖う者は それよりも大きく あなた自身を正しい道に引き入れるだろう
その方は 倒れ伏す獣となった大魚の横を通り 川を汚した人に手を差し伸べた
あなたは 村の人たちを集めて 人々にいままでのすべてを明かし 自らの行いを正しなさい
その方はその人を立ち上がらせた
すると その人が積み上げていた利得 不正で得たものたちはさびつき 倒れた大魚とともに消えて無くなってしまった

釣り人は走っていった少女たちを追って 村についた
すると 人々はどこかへと移動していたので ついて行くことにした
その先には 少女たちがいて そのそばには 自分の釣った魚を持っていく人 川を汚れに導いた人がいた
その人は みんなの前に立ち 地にひれ伏していった
私はあなたがたとこの村とに罪を犯し その悪しきことを公然と行いました
それは 川を汚していたこと 人々の口から出ることばによって 人々が出したごみによって 川が汚れるようにして そこから生み出されるものによって利得を得ていたこと
その報いである大魚が獣となり その人を襲うために村へ入ってきたことを言った
村の人々はざわめいていた
自分たちのしていたことが 明らかになり 自分たちの食べていたものが言い表されたからである
しかし 誰も彼を責め立てることもなく 何かを言うこともなかった
釣り人は 人々の間を通って前に行き その人の前へと立った
その人は顔を上げて 釣り人を見た
釣り人は言った
私は 川の汚れていることも 汚れを食べてそれをうみだすものをも知っていました
私はそれを釣り上げるために日々釣り糸を垂らして待ち望み 汚れの切れ端が釣れたとき それを地に山積みにして 処理をすることを怠っていました
私は あなたが犯した罪の片棒を担っていました
あなたが犯していたというのなら すべてを明かさず また 自分のしていることの報いを刈り取らなかった私も 罪を犯しています
釣り人は振り返って 全会衆の前で言った
この中で 私たちをさばこうとするものはいますか
この中で 罪を犯さずに 私たちの罪をさばこうとするものはいますか
自分の畑を管理することなく それを汚して そこに生じる汚れた草を食んで それでもさばこうとするものはいますか
すると 人々は口を閉ざし 釣り人を見つめた
釣り人は その方を見て言った
私たちは 自分の持っているものも 自分の食べているものも知ることができない 羊のような存在です
どうぞ 私たちに 何をすべきかを教えてください
少女たちも その方を見た
その方は言った
わたしとともに 船に乗って 川に出てみなさい
そこで 話をしましょう

人々はその方たちを船に乗せて漕ぎ出し ほかのものも 船に乗れるだけ乗り 川へと出ていった
その方は言った
網をおろしなさい
人々は川に網をおろした
その方は言った
網を引き揚げ 中にあるものを焼き捨てなさい
人々が引き上げると そこにはごみがたくさん入っていた
人々は大急ぎで陸にもっていき そこでそれらを焼き払った
その方は言った
これを繰り返し すべてなくなるまで焼き捨てなさい
また 新たに出たごみは 場所を決めて焼き それ以上汚れの広がらないようにしなさい
あなたがたは語ることに気をつけなさい
それが自分の食べるべきものか 語ってはならない恥ずべき事かを きちんと見極め 適切に処理しなさい
そうしなければ 自分が汚れたものを食べ 獣のようになっていくことを知りなさい
その方は 川の真ん中で 人々がごみを引き上げて焼いていく姿を見ていた

そのあとも 釣り人と川を汚した人とは 率先して川を浄化する取り組みに努めた
人々も 彼らに聞き従って ゴミを引き上げ 指定した場所で焼き払った
そして 彼らは その方のところに来て言った
これで この川もきれいになると思います
この歪みを正してくださりありがとうございます
その方は言った
それはあなたがたが選択したことであり あなたがたが行うことで成就するのである
気を抜けば 以前のように汚れ よりひどい状態となるであろう
だから 腰に帯を締めて 管理しなさい
彼らは 頭を下げて礼を言った

しばらくして 休憩するときになり 彼らは再びその方のところに来た
彼らは言った
いまお乗りしている船を あなたがたに差し上げます
あなたがたにはお世話になりましたから どうぞ受け取ってください
その方は言った
あなたがたがこれからも この地の管理者として堅く立つならば 受け取ろう
彼らは しっかりと頷いた

そして その方たちは 車を川に近づけ 船に荷物を移動させた
車は村に預かってもらうことで話をつけた
その方は船の綱を解くと 船は流れにまかせて動き始めた
村の人々はそれに気付き みな見送るために岸に立った
羊たちは船の端に立ち 村の方に手を振った
村の人々も手を振り 互いに見えなくなるまで それを続けた

羊たちは 船の上で夜を迎えた
その方は 傾く日を見つめ 食事を整えられた
食卓には 船の上から釣りをして 取れたばかりの魚が並んだ
それは村で食べたものよりもみずみずしく いのちに溢れていた
その方は言った 彼らの働きが はやくもあらわれているようだ
この魚は きよいところで住み その心地よさの中過ごしたものである
その時間が一時であっても 影響は計り知れない
羊は鼻をヒクヒクさせ 魚に近づいた
そして 目を輝かせた
みんなは席に座り 星の散らばる空の下で その方は食事の宣言をされた

料理は 魚のお造りと アラを煮た汁に 干した麦を混ぜたものであった
みんなは無言で食事した
それは 村で食べたときよりもおいしく 船の上ということもあって 心と舌は喜び踊ったからである
その方は 彼らが夢中で食べているのを見て 微笑んだ

その星は 彼らの上に いつも輝いていた
暗い夜の間 彼らがつまずくことのないように また 迷うことのないように
星は彼らを先導し 彼らの父がいるところへ その道の真ん中を 歩かせた
惑わすものも 地に這うものも その星に打ち勝つことはできず
星の導きに従うものたちに 勝つことはできなかった
それが 彼らに与えられたしるしであって 彼らが信じて受け入れた 彼らに与えられた義である

こうして 夜もふけていき それぞれ床に向かい 身を横たえた