たまごの話

世界を創られた方 すべての根源であられる方は
一つの卵を温めていました
大切に温めていたそれは もうすぐ中から出てくる時期になります
全能者は卵に語られました
もう時間だよー 出ておいで

しかし 卵は動きません
その方は困って覗き込み もう一度声をかけます
外はもう温かく 出ても大丈夫だよ 出ておいで

卵は少し震えると こう答えます
ぼくは腐っているから 出られません

その方は寄り添い 語ります
どうしてそう思うんだい?

だって 自分の中に 暗いものが見えるんだ
自分は腐っていて 外に出ても それを広げてしまうだけだ
このまま捨てられる方がいいんだよ

そして卵は沈黙しました

卵を創った方 その中も外も造られた方がこう言われた
外に出たことがなくて どうしてそう言えるんだ
あなたはまだ光を受けたことがなく
自分がどんな姿なのか どんな器なのか まだ知らないのだ
陶器が陶器師に文句を言うだろうか
あなたを創ったのは このわたしである
わたしがあなたをどれほど素晴らしく 愛にあふれたものに作ったか
出て来て あなた自身で確かめてみよ
そして 外の世界を見てみなさい
わたしが創った この世界を
自分の小さな殻に閉じこもるな
それは あなた自身も 心から望んでいることではないのだから
あなたの内も外も作ったわたしが語るのだ

卵は それでもつぶやきました
でも 自分には殻を破る力がないんだ

触れてもいないものに対して 判断するのか
あなたは 必ずその壁を打ち破り わたしの顔を見るだろう
一度でいい その壁に触れてみなさい
わたしが言う
その壁はたやすく破れ あなたはそこを通り抜ける
さあ 見守ってあげるから 出てきなさい
愛しい子よ

しばらくの間 何の動きもなかった卵の中は やがて意を決するように
その手を殻に伸ばしました