果物の絵

絵の展覧会 その中の一つにこんな絵がありました
その絵は 洋ナシのような果物の形をしていましたが
マトリョーシカのように 何重にも実を覆っていました
その果物は 一番うちはおいしそうに描かれていましたが
外側になるにつれて 貧相な おいしくなさそうなものへと変わっていきます
この果物は 絵の世界の中で 食べられることを恐れて 不味い実をつけてしまっていたのです

それを知らない絵の作者は 展覧会が始まる直前に気付き 驚きました
そして 絵に語り掛けます

どうかおいしいあなたを見せておくれ
あなたは そのみずみずしい姿がよいのだから
そのままでは 日の光を浴びることができずに 腐ってしまうよ
さあ 出ておいで

果物は 震えます
どうしよう 出たいけど 出られない
うーんうーんと 果物は悩みます

絵の作者は 悩む果物を見て 一つ案を思いつきます
そして 果物に少し描き足します

それは 外の不味い実を押し破るようにして 内の本来の実から出る芽でした
その芽は 少しずつ 光を浴びて成長し 元の実よりも大きくなり
地に落ちて木となりました

展覧会が開かれる頃には すっかり大きな木へと変わりました

その絵の題名は『引っ込み思案の彼へ』