ある貴族の女の子のお話

ある貴族の女の子がいました。
その子は 生まれたときから喧噪に包まれていました。
肉親同士で争い 女の子にとっての居場所はありませんでした。
幼い女の子は 追いやられるようにして路地裏の一室で暮らすようになりました。
貧しく生きるのもやっとな状態で 明日どうなるかわからない生活を送っていました。

女の子は 生きるために仕事をしに 外に行きました。
その少ない賃金で どうにか暮らしていました。
苦しい生活の中でも なんとか希望を見出そうと 女の子は作品を作りました。
女の子は 愛をこめて制作し 作品も美しく輝きだそうとしていました。

その日は 激しい雨が降っていました。
女の子は走って仕事から帰って来ました。
すると 部屋が何者かに荒らされていました。
生活費をやりくりして やっとの思いでくみ上げたその子の作品も バラバラに壊されていました。

雨の中 女の子は外にいました。
そして 雨に打たれながら泣きました。
雨は勢いを増して降ってきますが それに負けないくらい大きな声で泣きました。
ですが だれも聞いてはくれませんでした。

女の子は 絶望しました。
心は冷えて 凍り付きそうになりました。

ある男の人が 傘をさして通りかかりました。
上等な服を着た紳士でした。
男の人は 泣いている女の子を見ると 走り寄って 傘の下に入れようとしました。
ですが 女の子は男の人を振りほどき 泣き続けました。

男の人は 迷わず傘を捨てて 女の子を抱きしめました。
女の子が冷えて 心の底から凍ってしまいそうだったからです。
初めは 女の子は振りほどこうとしましたが 男の人は 必死に抱きしめ続けました。
「大丈夫 もう一人にしないから
ごめんね いままで怖かったね よく頑張ったね
これからは わたしが一緒にいるから
大丈夫だよ 心配しないで」

女の子は 力を抜いて やがて男の人をぎゅっとつかみ わんわん泣きました。

雨はまだ降っていましたが 雲の切れ間が見えてきました。

女の子は 男の人の屋敷に引き取られました。
男の人は その土地の領主でした。

男の人は 召使に命じて 女の子をきれいにしました。
お風呂に入れて 泥を落とし
化粧をして ドレスで着飾り 頭には大きな宝石を用いた髪飾りをつけました。

女の子は 戸惑ってばかりでした。
どうして自分は こんなに良くしてもらえるのだろうか と。

男の人は 女の子のために 庭にさんぽ道を造りました。
道の端には 女の子の好きなお花がたくさんあり
噴水や樹木のオブジェなど 楽しませるものであふれていました。
そして 女の子を誘います。
一緒におさんぽしよう。

その日は 雲が一切なく 澄んだ空が広がっていました。
女の子は 大空を見て 思いました。
まだすべてを受け入れられるわけではないけれど 私は自分の居場所に来ることができたんだ。
女の子は ようやく 生まれて初めて笑みを浮かべることができました。

父親である神さまは 自分だけ雨に濡れないところから見守ることをせずに
その場所である傘を捨ててでも 寄り添い抱きしめてくださいます。
女の子は その愛に包まれて 悲しみが憎悪とならずに 
苦しみを分かち合うための憐みに変えられました。

そして女の子は 祈りました。
どうか 私を苦しめた人たちも 幸せになりますように。

それゆえ、イスラエルの家よ、わたしはあなたがたをそれぞれその態度にしたがってさばく。――神である主の御告げ。――悔い改めて、あなたがたのすべてのそむきの罪を振り捨てよ。不義に引き込まれることがないようにせよ。
あなたがたの犯したすべてのそむきの罪をあなたがたの中から放り出せ。こうして、新しい心と新しい霊を得よ。イスラエルの家よ。なぜ、あなたがたは死のうとするのか。
わたしは、だれが死ぬのも喜ばないからだ。――神である主の御告げ。――だから、悔い改めて、生きよ。
エゼキエル18:30-32