絵の具の人

その人は絵の具で創られていました。
生まれたときから、そう望まれて創られました。
色鮮やかで、見る人を癒していました。

その人は、自分が生まれた理由を知るために、外に出ました。
人の役に立つために、仕事を始めました。
モノを運ぶ仕事でした。

ですが、その人は絵の具でできていましたので、
触るものすべてに、自分の絵の具がついてしまいます。

その人は自分が絵の具で創られたということは知りません。
なぜ、自分が触ったものが汚れてしまうのかも、わかりません。

ただ、その仕事は自分には向いていないということだけがわかりました。

その人は、別の仕事を始めました。
今度は料理をする仕事でした。

ですが、やはり触るものすべてに、自分の絵の具がついてしまうので、
この仕事にも向いていないということがわかりました。

その人は、仕事を探し、働きました。
一生懸命働きました。

ですが、自分には向いていないことだけわかりました。

その人は思いました。

自分は世界に必要なのか?
自分は何のために生まれたのか?

その人は、最後にこれだけと、仕事を始めました。
紙を売る仕事でした。

真っ白な紙。
お客さんに渡すために、一つ取り出します。

お客さんに渡すと、驚かれました。

また、ダメだったかな…

お客さんは、次第に笑顔になり、その人にお礼を言って帰っていきました。

あれ?なんだったのだろうか。
わからないけど、うれしい。

その人は、心が温かくなりました。

それから、お客さんに紙を渡すとみんな笑顔で帰っていきました。

お客さんは、口をそろえてこう言って帰っていきました。

「素敵な絵をありがとう」

ある日のこと。
その人は人生を思い返しました。

そういえば、どの職場に行っても、誰も自分を悪いとは言わなかったな、と。
ただ、自分がダメだと決めつけていたなと。

自分には、ほかの人ができることができないけれど。
自分ができることで、人を笑顔にできる。

そして鏡を見て言いました。

自分はこんなに素晴らしくできていたんだ。